2018.10.20

先日、顧問先から「政府で可決された働き方改革関連法案がヤバいっていう噂を聞いたのですが、詳しく教えてもらえませんか?」と相談されました。

こんにちは。中小企業診断士の皆川真人です。

とうわけで、厚生労働省が公益社団法人全国労働基準関係団体連合会(全基連)に委託して開催している「働き方改革関連法等読み解きセミナー」に行って参りました。このセミナーは、中小企業診断士・税理士・公認会計士など、主に中小企業の経営指導に携わる専門家を対象としたものでした。

さて、本題の働き方改革法案の骨子は、以下のとおりです。

Ⅰ 労働時間に関する制度の見直し
1 長時間労働の是正
(1) 時間外労働の上限規制の導入
(2) 中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
(3) 一定日数の年次有給休暇の取得
(4) 労働時間の状況の把握の実効性確保
2 多様で柔軟な働き方の実現
(1) フレックスタイム制の見直し
(2) 特定高度専門業務・成果型労働性(高度プロフェッショナル制度)の創設

Ⅱ 勤務間インターバル制度の普及促進等
1 勤務間インターバル制度の普及促進
2 企業単位での労働時間等の設定改善に係る労使の取組促進

Ⅲ 産業医・産業保健機能の強化
1 産業医の活動環境の整備
2 労働者の健康管理等に必要な情報の産業医への提供等

Ⅳ 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
1 不合理な待遇差を解消するための規定の整備
2 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
3 行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備


ふぅ、色々ありますね~。上記の施策はぞれぞれで導入時期が異なり、大企業と中小企業でも導入時期が異なるものもあります。

1つずつ説明するとかなりのボリュームになってしまいますので、ほとんどの中小企業にとってインパクトがあると思われる、Ⅰ-1-(3)の「一定日数の年次有給休暇の取得」について簡単に説明します。

この法律、「使用者は、10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする」というものです。

まず、対象となるのが「10日以上の年次有給休暇が付与される労働者」という件ですが、週5日のフルタイム勤務の方であれば入社6ヶ月時には10日間付与されます。アルバイトやパートタイム等の方でも労働日数と労働時間に応じて有給休暇が付与されます。

次に、「5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないこととする」という件についてですが、そもそも労働者が自ら申し出なければ取得できないのが年次有給休暇の特徴なのですが、使用者が労働者に年5日間の年次有給休暇を強制的に取らせないといけなくなります。もちろん、労働者自らが5日以上取得するのであれば特段必要ないのですが、例えば3日間労働者の希望で年次有給休暇を取得した場合、残りの2日間は使用者に労働者と時季を調整して取得させる義務が発生します。

「え! ほとんどが対象者じゃない。ただでさえ人手不足なのに、うちの会社で全員が5日間有休取られたら、正直かなり痛いよ!」

と思われる中小企業経営者の方も少なくないのではないでしょうか。

そもそも、年次有給休暇の取得は、労働者の権利です。ところが、その取得率は平成5年の56.1%から徐々に下がり続け、平成28年では49.4%と5割を下回っています。また、平成28年の労働者1人平均年次有給休暇取得率では、1000人以上の会社で55.3%、30~99人の会社では43.8%と、会社規模で大きな隔たりが出ています(出所:厚生労働省「就労条件総合調査」)。

また、中小企業は人手不足に加え、発注者側(大手企業)の残業規制等により受注者側(中小企業)の残業が増えているという実情に、さらに上記の義務が課せられる形になります。

この法律の導入時期は2019年4月からです。企業規模は問われません。早々に年次有給休暇の取得計画を立てる必要があります。

ただ、ネガティブな話だけではありません。年次有給休暇が取得しやすく、働きやすい会社にする事で、優秀な人材の採用・定着につながる事にもなります。中小企業診断士として、法改正対応というハード面だけでなく、ソフト面の見直しによる生産性向上などポジティブな助言を心がけたいと思っております。


ちなみにこのセミナー、東京近郊の開催がすぐに埋まってしまい、私は新潟会場まで日帰りで行って参加してきました。私にも働き方改革が必要なのかもしれません ^^;)

 

「働き方改革関連法等読み解きセミナー」に参加しました